Sulci 関谷里美さん:ブランドインタビュー(1/3)「かぎ針1本からのスタート」

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2016年8月27日、「芸術家の村」主催のワークショップ『Link Project』に登壇した、Sulci代表の関谷里美さん。
講演後、ラフィアで編むコサージュ作りを実際に体験させていただきました。(インタビュー・文:K.A)

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―(ワークショップに参加して)ラフィアの編み物、とっても難しいということがわかりました…。普通の毛糸よりも、かなり大変な編み作業ですね。実際に編んでいる方々の技術の高さを知りました。

最初は編み子さんたちにかぎ針の持ち方を教えるところからでしたので、立ち上げには本当に苦労しました。
また、「編み図」は日本独特の記号です。海外では、編み方はたいてい口頭で伝えられます。編み図を理解してもらうことも、最初のステップでした。

―関谷さん、そして現地の編み子さんがそうした苦労を乗り越えて作ってきた製品であると知るとなおさら、商品1つ1つにエピソードがあるんだなと感じます。“手編み”であることからも、やさしさを感じます。
一方で、どのバッグを手にとっても、編み目が丁寧ですし、均質化されていますね。

ワークショップでも説明しましたが、トリミング(表面に飛び出した細かな繊維のカッティング)が重要なんです。
かなり手間と時間のかかる作業で大変なのですが、丁寧にやるよう徹底しています。最後にアイロンをかけて目を整えることも重要です。

―しかも、出来上がったものがとても丈夫で、驚きました。

ラフィア糸を3本どりで編みこむので、丈夫ですし、たとえ1本切れても心配いりません。
ラフィアの特徴でもある「軽い」「やわらかい」「耐久性がある」「通気性が良い」という利点が十分発揮されるバッグなんです。

 

セブ島で出会ったバッグがきっかけに


―関谷さんが「Sulci」を立ち上げた経緯について、教えてください。

もともと、青山で雑貨店「CAT HOUSE」を経営していました。イギリス・アメリカ・フランスなどから猫グッズを輸入し、販売していました。
決して売り上げが悪かったわけではないのですが、ある日ふと、25年間経営してきたこの雑貨店を閉めることにしたんです。
次にどんなことをやりたいか決まっていませんでしたが、不思議なことに、このときはスパッとお店をやめることができました。
その後、少しのんびりしようと思って、セブ島のリゾート地に行きました。
そのときに立ち寄った土産物店で、入れ子のようなバッグが3個セットで安く売られているのを見つけました。
ふだんはそんなことは思わないのですが、それがあまりにも安いことが気になりました。「作り手はいくらもらっているのだろうか?」と。
そのバッグには作り手だけでなく、商品を管理するスタッフや土産店の店員などもかかわっていますから、一番苦労しているはずの作り手に果たしてどれくらいのお金が支払われているのか、心配になりました。

 

―長く続けたお店からスパッと切り替えができたり、ふだん気にならないことが気になったり…なんだか運命的なものを感じますね。

このときは本当にそうでした。観光などで40以上の国を訪れてきましたが、土産物店で見た商品のことなんて、すぐに忘れてしまいます。
でもこのときに見た理に合わないバッグのことは、日本に戻ってからも忘れられなかったんです。

このとき、自分が次にやりたいことが見えたような気がしました。
私はもともとモノを作ることが好きで、特に編み物が趣味でした。そこで、セブ島の作り手さんたちをトレーニングして手編みのバッグを作って、日本で売ることはできないだろうかと考えました。
早速、関連する団体を検索し、10件ほどメールしてみました。なかなか返事はもらえず気持ちが沈みかけたとき、ある方の紹介で、セブ島とボホール島でトレーニングを開始できることになったのです。

 

―そこで、現地のパートナーであるLucilさんと出会ったのですか。

はい。パートナーとしてLucil、さらにその友人たちともつながることができ、セブ島の小さな町の役場を借りて、現地の女性たちに編み物を教えることができるようになりました。
初期メンバー(編み子さん)は女性20人くらい。最初はかぎ針の持ち方からでした。本当に「一からのスタート」です。
編み物ができるのは自分だけ。工場もない。とにかく、まずは彼女たちに“教える”のみでした。

パートナーのLucilにはとても助けてもらっていて、彼女がいなかったら今のSulciはないと思います。
今では編み子さんへの仕事の割り振り、ステップアップの段取りなど、現場のことはほとんど任せています。

 

かぎ針1本からのスタート

ph_su_P2141459―トレーニングを始めて、成果はすぐに出てきましたか。

いいえ。そもそも商品を作るからには、ハイレベルの技術で、品質の高い商品を作れるようにならなくてはいけません。
そのレベルに到達し、仕事を続けることができているのは、初期メンバーのうち4、5人(2割程度)しかいません。厳しいトレーニングに耐えられなかったり、ついていけなくなったり、性に合わなかったりで、辞めていくメンバーも多くいました。
しかし、最初の大変さを乗り越えれば、十分な賃金をもらうことができ、自分に自信を持って仕事ができるようになります。


―仕事を楽しめる可能性がある人にはなんとかトレーニングを乗り越えてもらって、自信を持って働けるようになってほしいですよね。

国民性の違いや考え方の違いで理解を要するのに時間がかかったりと、大変な部分もありますが、育てた人が楽しそうに、かつ目標をもって続けてくれているのを見ると非常に嬉しいです。特に、子供に教育を受けさせるために母親が仕事をもつことは大切だと思っています。
自分に自信と誇りを持って働き、自立していけること。いわゆる「途上国」と呼ばれているところにも、すばらしい人材と資源があることを、Sulciから伝えていきたいと思っています。
今は、セブ島で約50人、ボホール島で約10人、10代後半から60代の女性たちがSulciバッグを作っています。分からないところを教え合いながら、楽しそうに、かつ真剣に編んでいます。

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